株式会社パーソナルクレド舎

天から与えられた使命を生きる。

天外伺朗さんのフロー経営論 「天外レポートより」
(2013/10/26)

フロー経営を提唱されている、

ソニーの元常務、天外伺朗さんが発行されている天外レポート

毎回とても勉強になるのですが、

今回いただいたものは、特に興味深く、

「転載ご自由に」、としてくださっているので、

その一部をこちらに掲載させていただきます。

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1.    ソニー凋落の要因

 

 もう、人々の記憶からは薄れつつあるが、2003年の4月に

ソニーの業績が急落し、それにつられて日本中の株が暴落した事がある。

「ソニーショック」と呼ばれた。

ソニーの内部では、その2年ほど前よりうつ病が激増し、

惨憺たる状況になっていた。

 

 1964年に入社して以来、エンジニアたちが目を輝かせて

無我夢中で仕事に取り組む職場しか知らず、それが当たり前だと

思っていたので、酷い状況にただ驚くばかりだった。

何が違ったのか必死に考え続けた結果、2年ほどして

ようやく要因を探り当てた。最初のヒントは、高橋伸夫東大教授が

書いた『虚妄の成果主義』(日系BP社)という本だ。

さらに調べると、チクセントミハイという心理学者の「フロー理論」で

すべてが読み解ける事がわかった。

 

 ソニーは創業以来、私が後に名づけた「フロー経営」を実行して

きたのだが、1995年にトップが替わり、ジャック・ウエルチを追っかけて

全面的にアメリカ流の「合理主義経営」を導入した。結果として、

それまでの「フロー経営」が徹底的に破壊されてしまったのだ。

私は、チクセントミハイの著作を片っ端から読み始めた。

 

2.    チクセントミハイとの出会い

 

 ちょうどその頃、アメリカのTED(Technology,Entertainment,Design)

コンフェランスに行かないか、と誘われた。

私は新しい研究所を設立準備中で忙しく、断り続けていたのだが、

ふとプログラムを見たら講演者の中にチクセントミハイの名前があった。

こういう偶然の一致を「共時性」という。

そのとき『運命の法則』(飛鳥新社)という本を執筆中だったが、

最初の章に「共時性を発見したら、それに乗っていけ!」

と書いたばかりだった。

 

 まずは、自分で実行しなければいけない。私は八方手を尽くして、

講演直前のチクセントミハイと昼食のアポを取った。

 

 彼の希望は天婦羅だった。

 カリフォルニア州モンタレー市は

海辺にあり、日本食屋も多く、天婦羅はおいしかった。

 

 2004年2月28日のことだ。

 

 しばらく会話が弾んだ後、

私は次第においしい天婦羅が喉を通らなくなってきた。

 

 この昼食は、私に下心があり、

「フローに入ると運が良くなる」

ということを、何とかチクセントミハイの口からいわせたかったのだ。

ソニーの技術開発プロジェクトで、CD、NEWS(一時は市場を

席巻した専門家向けコンピュータ)、AIBO(犬型ロボット)などに

携わったが、明らかにチームが「フロー」に入り、毎回信じられない

ような好運に恵まれた話をした。

 

 私にとって「フロー」と好運が表裏一体になっている事は信念と

なっており、それを「フロー理論」の提唱者であるチクセントミハイが

同意してくれたら、執筆中の『運命の法則』のハイライトになるはずだった。

 

 ところが、押しても引いても彼はYESとはいってくれない。

「たしかにね、フローに入るとマインドがオープンになるからね。

運が良くなったように感じるかもしれないね」とはぐらかされてしまう。

しつこく迫っていくと、「私は学者だから合理的な範囲でしか

ものがいえないよ」、ついには「そんな事をいったら私の学者生命が

危うくなるよ」とまでいわれた。私は深くため息をついた。

 

 ああ、天婦羅代が無駄になったか・・・と思った矢先、彼は

「ここで講演の直前にあなたに会うことは、すごい共時性

(シンクロニシティー=意味ある偶然の一致)だ」といいだした。

 

 私は、あやうく文句を飲み込んだ。ついさっき合理的な

範囲でしかものがいえない、といったばかりじゃないか。

共時性という概念はまったく合理的ではない。

 

 彼がなぜ共時性といったかというと、

その日の午後の講演で、

最初のパワーポイントにソニーの設立趣意書を用意してきていたのだ。

 

 私は当時ソニーの上席常務であり、

講演の直前に私と会った事に

偶然以上の何かを感じたらしい。

 

 講演が始まると、「自由闊達にして愉快なる理想工場」という

設立趣意書の英語版がスクリーンに映し出された。

 

 これが「フロー」にはいるコツだよ、というのだ。

40年以上ソニーにいたので、何千回となく見てきた文章だが、

私はなぜか怒りがこみ上げてきた。

 

 バブルがはじけた後、ソニーや富士通など多くの企業で

米国流の「合理主義経営学」を導入して、日本の産業界は

凋落していった。

 

 その輸出元の米国で、米国人が米国人相手に、それと

正反対の「フロー経営」を説いており、

しかもそのお手本が創業期のソニーだというのだ。

 

 チクセントミハイ本人には悪気がないのはわかっていたが、

「合理主義経営学」から「フロー経営」への移行に関して、

私は米国に負けてなるものか、という戦慄に震えた。

 

帰国してすぐ事の顛末をレポートに書いて副社長以上に

配布した。当時相談役の大賀典男さんからは直々に電話があり、

「素晴しいレポートだ」とお褒めをいただいた。

だが、執行部からは完全に無視された。

 

それから10年になろうとしているが、ソニーはいっこうに

立ち直れそうもない。

 

 

3.    岡田武史監督との出会い

 

 そんないきさつがあったので、

拙著『運命の法則』の後半は

企業経営の話になってしまった。

 

 私の強い思いで、内容が途中で少し

方向が変わってしまったのだが、

それでもベストセラーになった。

 

 この本が日本合理化協会の目に留まり、

経営セミナーの開催を依頼された。

 

 かくして2005年から、

全6回の「天外塾」を開催する事になった。

 

 その後、日本能率協会や神田昌典氏の(株)アルマック

(当時)主催でも天外塾が開催された。

 

 2007年アルマック主催の天外塾に、

横浜F.マリノスを退団し

浪人中の岡田武史監督が参加された。

 

 岡田さんは、その時点では

「管理型マネジメント」が得意な方で、

札幌でも横浜でも実績を上げてこられた。

 しかし、その限界を感じ

「フロー経営」を学びに来られたのだ。

 

 スポーツの世界では「フロー」の事を「ゾーン」と呼ぶ。

選手が練習以上の力を発揮して奇跡を呼ぶことはよく知られていた。

 

 しかしながら、その理論的背景、体系的な方法論はなかった。

 

 私は研究者出身のため、

物事を追求する事は得意であり、「フロー経営」を

単にチクセントミハイの「フロー理論」だけでなく、

脳科学、深層心理学、トランスパーソナル心理学などを駆使して

体系化していた。

 コーチングの元祖、ガルウェイの

「インナーワーク」も参考にしたが、

これは元をたどればテニスのコーチ法から出発しているので、

スポーツの方法論が企業経営に導入され、それが岡田さんを通じて

またスポーツに舞い戻った感じだ。

 

 私は引退前の数年間、

脳科学と人工知能を統合した学問

「インテリジェンス・ダイナミクス」を提唱して、

その名を冠した研究所の

所長を務め、脳科学を勉強していた。

 

 そのときに、人間の脳の中の

計算で、大脳新皮質における計算が遅すぎてキャッチボールも

バッティングも出来ないことを発見していた。

運動はすべて古い脳で実行されており、新皮質の干渉を排除

しなければうまくいかない。

同様に「フロー」も古い脳が活性化しないとは入れない。

 

 岡田監督は、そのような「フロー経営」の

原理をよく理解し、

練習法から工夫していき、2010年の南アW杯に見事に結実された。

直前までマスコミがひどく叩いていたので、多くの国民の感動に

つながった。当時私は岡田監督を指導したという事で、毎週のように

週刊誌に取り上げられ、天外塾の人気が一挙に高まった。

 

 W杯が終わった2010年10月から12月、

「岡田武史特別セミナー」

を開催していただいた。

「管理型マネジメント」から「フロー経営」への180度の転換。

 

 いかに大脳新皮質の干渉を排除して古い脳を活性化するか、

どういう練習をするか、どう発言するか、選手ごとに見せるビデオを

どう編集するか、様々な細かい工夫が実ってW杯成功につながる道のりは、

多くの経営者の感動を呼んだ。

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いかがでしょうか。

 

理性ではなく感性から行動していくことが、

フローライフに導かれるための最大のポイントですが、

 

合理的なビジネス社会で生きている人にとっては、

根拠や論理性の無いところものは、

にわかに信じられない方もたくさんいらっしゃると思います。

私自身もリクルートでバリバリ音を立てて働いていた時は、

「目に見えないものを信じるのは弱い人間のすることだ」くらいに思っていたうちの一人です。

でも、だからこそ、

自分の身に起きている奇跡や、湧いてくるメッセージに従えば従うほど、

人生をうまく流れていくのだということを、声を大にして言いたい。

こうして、科学的な研究が進み、そのメカニズムが解明されていくことで、

理性で自分をコントロールして苦しい思いをしている、

バリキャリ女性たちが一人でも多く解放されていくといいなあと心から願います。

 

私も、自分に起きていることを、可能な限り解明し、

わかりやすくお届けすることに務めたいと思います。

 

天外さん、感謝です☆